長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

福永・中野研究室

簡単磁石教室
はじめに

 1992 年に北京を訪れた際に、おみやげとして「漢代司南模型」というもの頂いた。方角を記した銅板の上にスプーンの形をした磁石を置いて方角を知る器具の模型である。器具のケースには「中国四大発明之一」と記されている。「磁石の指向性を最初に利用したのがいつであったか」については諸説があるらしく、紀元前の中国と言う意見や11世紀の中国という意見などがあると聞く。また、古代ギリシャ人は磁石に吸引力があることを既に知っていたされており、とにかく古い時代から不思議な現象があることが知られていたことは確かなようである。

 「離れた2つの物体の間に力が働く」というのは、現代に生きる私たちに取ってもやはり不思議なことである。「不思議なこと」の原因を究明することは必ずしも容易ではないが、「不思議なこと」に興味を抱くことは、誰にでもできることのように思える。興味を持つことが「不思議なこと」の利用や「不思議なこと」についてより深い理解に繋がるのであろう。

 この講義は、「不思議なこと」が「わけのわからないこと」で終わらいようにとの願いを込めて構成した。そのため、テキストには多少厳密ではない点も含まれているが、本質ははずさないように作ったつもりである。一人でも多くの方が磁石に興味を持っていただけることを願っている。

 磁石に関して詳しい話をする前に、現在使われている最も強力な磁石を紹介する。紹介する磁石の小型のものは容易に入手できるが、一般の教材に使われて いる磁石に比べればはるかに強力である。子どもたちに自由に触らせるのは少し 危険かもしれない。また、磁石を扱う際には腕時計をはずしておく必要がある。