長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

福永・中野研究室

簡単磁石教室
1.1 磁石の素  1.3 磁石の力を消す。磁石を作る
1.3.1 強力磁石を無力にする

 図1.9(a)のように二つの磁石と鉄片を用意する。それぞれの磁石は強力であることを確認しておく。次に、これらの磁石と鉄片を図1.9(b)のように組み合わせるた後再びその磁石の吸引力を調べると、吸引力がほとんどなくなっているいることがわかる。これは、図1.9(c)の示すように原子磁石が配列し、N極とS極が打ち消し合い、磁石の端部に磁極が表れなくなったためである。

図1.9 磁石の無力化(磁石の組み合わせにより方法

 この実験を自分でやってみようとされる方のためにコメントを付け加えておく。この実験では、磁石を組み合わせた後も弱い磁力が残るので、クリップなどの小さな鉄片は組み合わせ後も吸引される。吸引される物質としてナットなどの大きな鉄片を用いるのがこつである。

 もっと簡単に磁石を無力化するには、磁石を熱してやれば良い。フェライト磁石(黒板に資料を止めたりする黒い磁石)なら、400-500℃程度まで熱すれば無力化する。

1.3.1 強力磁石を無力にする

 原子磁石がその方向を変えるのが困難な物質では、弱い磁界では原子磁石の方向は変わらない。しかしながら、非常に大きな磁界を加えれば原子磁石の方向を変えることができる。図1.10に示した方法で無力化した磁石では、原子磁石の方向が揃っていない。この無力化した磁石を他の強力磁石に吸引させた後クリップを吸引してみると、磁力がもとに戻っていることが確認できる(図1.11)。これは原子磁石が再び一方向に整列したためである。

 ドライバー(ねじ回し)の先端部が磁石になり、ねじを吸引してしまうことがある。ドライバーの先端部の鉄には、その機械的強度を増すために、炭素などが溶かし込んである。そのため、原子磁石の向きが変わり難くくなり、上記の現象が起こって磁石になるのである。吸引力を消すには、ドライバーの先を熱してやれば良い(機械的強度を保つためには、熱した後急冷する必要がある)。

図1.10 加熱による磁石の無力化      図1.11 強力磁石による着磁