長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

福永・中野研究室

簡単磁石教室
2章  電流磁気と電磁力

電流の流れによって磁針の向きが変わることが発見されたのは1820年のことなので、磁石の歴史と比べればずっと最近のことである。電流と磁気の相互作用を記述する法則もスマートな形でまとめられている。しかしながら、理科を学ぶ立場、あるいは教える立場からすれば、スマートな法則は取っ付き難い面を持っている。そこでこの章では、電流が作る磁界や電流と磁界の相互作用について、磁石とのアナロジーで説明を試みる。以下の内容を理解して頂くためには、1.1.1 項で述べた磁石に関する3つの性質に加えて、2.1節で説明する「右ねじの法則」を知ってもらう必要がある。逆の言い方をすれば、磁石に関する3つの性質と右ねじの法則さえ知っていれば、2章の内容は理解できるように説明しているつもりである。

2.1 電流の作る磁界

2章では、磁極が空間に磁界を作ることを述べたが、自然界にはもう一つ磁界の源となるものがある。それが電流である。図2.1(a)は電流の周りの方位磁針の向きを模式的に示したものである。磁力線を示すと図2.1(b)のようになる。磁力線の向きは、右ねじを電流の方向にねじ込むとき,ねじの回転する方向となる(専門用語では、右ねじの法則という)。

「なぜ、電流が磁界を作るか?」という質問に対しては、「なぜ、N極とS極が引き合うか?」という質問と同様、答えることができない。それが自然界の法則である、と認めて説明を続けていくことにする。

図2.1 電流の周りの磁界