長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

福永・中野研究室

簡単磁石教室
2章  電流磁気と電磁力  2.2 コイル
2.2.1 コイルで磁界をつくる

 電流も磁界を作るので、電流でも磁石と同じ働きをするものを作れるはずである。そこで、図2.2(a)に示すようなコイルを作り、電流を流して磁針に近づけてみると、磁針はコイルの方向に向く。電池の向きを逆にすると磁針は逆向きとなる。

 磁力線を示すと図2.2(b)のようになる。コイルの周りで起こることは磁石の周りで起こることと同じである。実際にはコイルは磁極を持たないが、コイルから離れた位置にいる私たちは「磁界がコイルから発生しているのか、磁極(磁石)から発生しているのか」を区別することはできない(コイルを見えなくしてしまえば磁石かコイルかの区別はつかない)。したがって、コイルの位置にあたかも磁石が存在するかのようである。磁力線はN極からS極に向かう方向と決めているいるので、右側がN極に左側がS極になっている磁石があるのと同じである。

図2.2 コイル近傍の磁界

 コイルを磁石に置き換えて考えるとき、コイルのどちら側をN極に置き換えるかは、2.1節で述べた右ねじの法則から知ることができる。一例として、図2.3 に1回巻きコイルの周りの磁界を示している。右ねじの法則を使って考えると、磁力線は紙面前方からコイルに入り、後方から出ていく。したがって、コイルの外側の磁界は、紙面前方側がS極、後方側がN極の円板状の磁石が作る磁界と同じである。コイルを多数回巻くことは、同じ磁石を積み重ねることに相当するので、何回巻いたコイルでも、右ねじの法則から置き換えられる磁石の極性を知ることができる。

図2.3 1回巻きコイルの周りの磁界
2.2.2 電磁石をつくる

 コイルを磁石に置き換えられるのなら、コイルで鉄片を吸引することができるはずである。しかしながら、図2.2で用いたコイルをにクリップに近づけてみてもクリップはコイルに吸引されない。これは、コイルの作る磁界が磁極の作る磁界に比べて小さいためである。ここでは実験できないが、非常に大きな電流を流すと、鉄片を吸引することができる(鉄片はコイルの中央まで引き込まれる)。

 コイルの中に鉄心を入れてやれば、図2.4(a)に示すように、コイルで鉄片を吸引することができる。これは、図2.4(b)に示すように、コイルの作る磁界により鉄心内の原子磁石が配列し、鉄心の端に磁極が発生したためである。すなわち、電流と磁極の両者が磁界を作るため、コイルのみの場合に比べてはるかに強い磁界が作られるようになったのである(特殊な電磁石を除けば、電流による磁界に比べて磁極による磁界が強い)。この磁石は電流が流れているときのみ磁界を発生するので電磁石とよばれる。

図2.4 電磁石
図2.5 電磁石による吸引機構

電磁石では、電流を流すことにより吸引力を発生させることができる。また、電流の向きを逆転することにより磁石の極性を変えることもできる。これらの特徴を利用して、モータなど多くの身の回りの電気機器に利用されている。