長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

福永・中野研究室

簡単磁石教室
2章  電流磁気と電磁力  2.2 コイル
2.3 磁石とコイルの相互作用

 2.2節で、電流の流れているコイルはあたかも磁石のように振る舞うことを述べた。したがって、コイルと磁石の間に働く力は、磁石と磁石の間に働く力に置き換えて考えることができる。たとえば、本日午後の実験工作テーマの一つである“クリップモータ”について考えてみよう。クリップモータでは、図2.6(a) に示すように、N極とS極の間にはさんだ円形のコイルに電流を流す。図には、円形コイルに流れる電流による磁力線も描かれている。図に示した方向に電流を流すと、磁力線はコイルの上側から入り下側から出ていく。したがって、このコイルは図2.6(b)に示す上側がS極、下側がN極の円板磁石と同じ力を受ける。円板磁石のS極は、固定された磁石のN極に近づこうとするので、右回りに回転することになる。コイルが90回転したところで電流の向きを切り替え、常に図2.6(a) に示した方向に電流が流れるようにしてやると、モータは回転を続ける。

図2.6 コイルが受ける回転力(クリップモータの原理)

 図2.7には、コイルの受ける力の例をもう一つ示している。図2.7(a)に示すように、コイルの内部の磁力線はコイル上面から下面の方向を向いており、コイルの半分が固定磁石からはみ出している。コイルを等価な磁石に置き換えることにより、このときコイルが受ける力を知ることができる。コイルの作る磁力線はコイルの上面から下面の方向に向いているので、上側がS極、下側がN極の磁石でコイルを置き換えることができる(図2.7(b))。固定磁石のN極と置き換えた磁石のS極が、また固定磁石のS極と置き換えた磁石のN極が引き合うので、置き換えた磁石(コイル)は固定磁石の中に引き込まれる。

図2.7 磁界中を流れる電流が受ける力

 以上、磁石とコイルの間に働く力について説明したが、2つのコイル間に働く力も上述の方法と同様に、コイルを磁石に置き換えることにより知ることができる。